研究内容

Research topics

正常な生体の機能に必要な「かたち」が作られていく仕組みを、
さまざまな分子細胞遺伝学的アプローチやライブ・イメージングによって
明らかにしています
得られた知見を医学応用につなげる研究も進めています


KEY WORDS
発生、神経科学、神経幹細胞、がん、細胞外基質、リンパ系
 Development, Neuroscience, Neural stem cells, Cancer, 
Extracellular matrix, Lymphatic system 

神経幹細胞から脳の形ができるまで

哺乳類の大脳が作られる過程では、神経幹細胞(神経前駆細胞)と呼ばれる未分化な細胞が分裂を繰り返し、発生時期に応じた種々の娘細胞たちを生み出していきます。 一つ一つの神経幹細胞がたどる運命はさまざまですが、脳の発生を全体として眺めてみると、各個体間で実に再現性良く、多様な細胞種からなる複雑な構造物が作り上げられていくことに気づきます。
このような、発生の時間軸に沿った、神経幹細胞とその娘細胞たちの多様な運命はどのようなメカニズムで決定されているのでしょうか。
この問いに対して、私たちは単一細胞レベルで得た遺伝子発現情報を利用し、モデル動物を用いた分子細胞生物学的なアプローチに細胞のライブ・イメージングを組みあわせた研究をおこなっています。

参考文献)
Nature Communications 2016,7:11349,(日本語プレスリリース
神経幹細胞が発生の時刻進行に伴ってその個性を変遷していく仕組みと細胞周期進行との関係を示しました(川口)。
Nature Cell Biology 2020, 22:26-37
神経幹細胞の性質維持に重要な、形をつくる分子メカニズムを明らかにしました(下向)。
Neurosci Res, 2019,138:3-11 (review)
時々刻々とその性質を変えていく神経幹細胞が、どのようにして発生の正しい時刻を知るのかについて述べた総説です。

細胞の動きを制御して形をつくる

私たちはモデル動物を用いて、神経幹細胞の分裂の様子、それにより生まれた細胞が移動を開始する様子、ニューロンが移動して大脳皮質が形づくられるまでの動きを、脳組織の中で「観察」します。 そして各種実験「操作」を加えることで 、どのような仕組みでそれぞれのステップが制御され、再現性よく脳が形作られているのかを明らかにしてきました。

2021年に採択されたJST創発的研究支援事業では、さらに得られた成果を利用して、人工的に細胞を動かし、器官形成を制御する技術を得ることを目指します。

参考文献)

Nature Communications, 2019, 10:2780.(日本語プレスリリース
ニューロン分化細胞の移動の第一歩である脳室面からの細胞離脱の実行役分子Lzts1を、新たに見出しました(下向、川口)。
Front. Cell Dev Biol.  2021,8,623573 (review) 
総説です。Lzts1は、ヒトなど複雑な脳組織構造を持つ生物種に豊富に存在する神経幹細胞(outer radial glia)の誕生も制御しています。

細胞の可能性を理解して応用する

 一見何の変哲もない成体上皮組織に、特別な能力をもつ細胞が潜在します。イモリの水晶体再生現象を担う虹彩上皮細胞はその事を教えてくれました。 

鳥類・哺乳類の虹彩上皮組織内に幹細胞が存在し、培養すると水晶体や網膜神経へ分化できることを実証しました。その分化転換には発生期のしくみが利用されることが分かりました。またその分子基盤解析から、様々な変性疾患や癌などの疾患との関わりが示唆されました。 

発生・再生・癌のリーダーとなる幹細胞には共通するしくみがありそうです。そのしくみを解き明かして、医学応用へ活かす研究を進めています。(小阪) 


参考文献)

BMC Cancer   20 ( 1 )   521,2020
STEM CELLS   36 ( 9 )   1341 - 1354, 2018

細胞外基質の構成と機能

健康寿命延長の最大の阻害因子である高脂血症・糖尿病などの生活習慣病には、多くの要因が関与することが知られています。
その発症機序は依然、不明な点が多く残されていますが、細胞外基質の構成因子であるコラーゲンの加齢性変化の関与が疑われます。モデル動物を用いて、それが肝臓や膵臓といった生体機能に及ぼす影響について研究を行っています。(百田)

四肢リンパ管の基礎/応用研究

続発性リンパ管浮腫の病態解明のための、リンパ管イメージングを含めた解剖学的研究を進めています。
得られた知を利用した臨床診断技術の開発を行っています。
(品岡:むくみを科学する先進リンパ学講座 特任教授)
 機能再生・再建外科学講座 研究紹介ページ

2022年度開始 JST 創発的研究支援事業に採択されました

研究課題「上皮構造からの細胞離脱による器官形成制御」(川口)
創発的研究支援事業についてはこちら(JSTホームページ)

Department of Human Morphology

Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
人体構成学分野
〒700-8558 
岡山県岡山市北区鹿田町2丁目5-1
TEL:086-235-7092
FAX:086-235-7089
Email: em2kai=okayama-u.ac.jp 
(=を@に変えて送信してください)